カウンセリングを受けたいけど「何を話せばいいのか分からない」人へ

何を話せばいいのか分からないクライアント

初めてカウンセリングを受けるとき、多くの方が「いったい何を話せばいいのだろう?」と不安になるものです。これはとても自然なことです。カウンセリングは日常の会話とは違い、「ここで自分のことを話すのだ」と思うと、かえって緊張してしまうのです。私自身、長年カウンセリングを行ってきましたが、初回の面接で「緊張しました!」とおっしゃる方は決して珍しくありません。

ここでは、そんな「何を話せばいいのか分からない」と感じたときのヒントをお伝えします。少しでも安心して臨んでいただけるようになれば幸いです。

「分からない」ことをそのまま話して大丈夫です

最初にお伝えしたいのは、「分からない」とそのまま言っても良い、ということです。カウンセリングでは、きちんと話をまとめる必要も、完璧な答えを用意する必要もありません。むしろ「どう話したらよいか分からない」「今、言葉にできない」と率直に伝えていただくことが、出発点になります。

カウンセラーは「話せない気持ち」そのものを一緒に扱っていきます。ですから、無理に整理しようとせず、ありのままの状態で来ていただいて大丈夫なのです。

「きっかけ」や「最近の出来事」から始めてみる

いざとなると「自分の悩みをどう説明すればいいのか」と迷う方も多いでしょう。その場合は、細かい背景を話そうとせずに、次のような入口から話し始めてみてください。

  • 「実は最近、眠れない日が続いています」
  • 「職場での人間関係に疲れてしまって…」
  • 「理由は分からないけれど、気持ちが落ち込むことが多いです」

具体的に“困っていること”や“最近気になった出来事”をひとつ挙げるだけで十分です。そこから少しずつ広げていくのは、カウンセラーの役割です。

「体のサイン」からヒントを得る

気持ちをうまく言葉にできないときは、体に現れているサインに注目してみるのも良い方法です。

  • 胸がドキドキする
  • 胃が重い
  • 朝なかなか起きられない
  • 人と会うときに体がこわばる
  • 職場のAさんの顔を見ると動悸がしてくる

このような体の反応は、心の状態を映し出す大切なヒントです。「言葉にならないけれど体がこんなふうに反応している」と話していただければ、それをきっかけに気持ちを整理していくことができます。

「今の気持ち」を一言で伝えてみる

「うまく説明できないけれど、とにかく不安」「ただただ疲れている」「何もする気が起きない」──たった一言でもかまいません。その一言に込められた感覚を、カウンセラーが丁寧に広げていきます。

たとえば「疲れている」と一言だけ言えたとしましょう。そこから「どんな場面で疲れを強く感じますか?」と尋ねていくことで、職場や家庭、人間関係など具体的なテーマにたどり着くことができます。

「話したくないこと」は話さなくても良い

初回のカウンセリングでは「全部話さなければならない」と思う方もいます。しかし、無理に打ち明ける必要はありません。「今は話せない」と思ったことは、そのまま大切にして構いません。

むしろ、話したくないことを「まだ話す準備ができていません」と伝えることも立派な自己表現です。安心して話せるようになったときに、必要であれば少しずつ触れていけば良いのです。

ノートやメモを持ち込むのも一つの方法

緊張すると頭が真っ白になってしまう…そんなときは、事前にメモをしておくのも効果的です。

  • 話したいことを箇条書きにする
  • 最近の出来事を時系列で書いてみる
  • 今日カウンセラーに聞いてみたい質問をひとつ書いておく

実際、メモを取り出しながらお話しになる方は多くいらっしゃいます。カウンセリングはテストではありませんので、準備してきたメモをそのまま読んでもまったく問題ありません。
また、メモをそのままカウンセラーに渡されて、カウンセラーがそれを一読してから質問して答えてもらうこともよくありますよ。

カウンセラーと一緒に探していくもの

「話さなければならない」というプレッシャーを感じる必要はありません。カウンセリングは、相談者が“上手に話す場”ではなく、カウンセラーと一緒に“探していく場”だからです。

どこから話しても構いません。沈黙の時間があっても大丈夫です。カウンセラーは、その沈黙の中にある気持ちを大切に受け止めています。

まとめ

初めてのカウンセリングでは、「何を話せばいいのか分からない」と感じるのが自然です。ですが、その「分からない」という気持ちさえも大切な入口になります。

  • 分からないことをそのまま話す
  • 最近の出来事や体のサインから話す
  • 一言だけ気持ちを伝える
  • 無理に全部話そうとしない
  • メモを持ち込んでみる

これらの小さなヒントがあれば、安心してカウンセリングを始めることができます。どうか「準備ができていないから行けない」と思わず、ありのままの自分で一歩を踏み出してみてください。

カウンセリングは“完璧に話せる人”のためのものではありません。むしろ「どう話していいか分からない」という方にこそ、安心して利用していただきたい場所なのです。