心理カウンセリングを受けてみたいと思っても、最初の一歩を踏み出すまでには大きな勇気がいります。
「初めての面接では何を話せばいいの?」
「ちゃんと説明できるか不安…」
「いきなり心の奥まで聞かれるんじゃないか」
このように、不安や緊張を感じるのはとても自然なことです。カウンセリングは安心して話せる場であると同時に、最初は誰もが戸惑うもの。そこで今回は、1回目の面接 について分かりやすくご紹介します。
1回目の面接は何をする?

心理カウンセリングの最初の面接は、専門的には 「インテーク面接」 と呼ばれます。インテークとは「取り入れる」「受付ける」という意味があり、ここでは相談者の状況を丁寧に把握することを目的としています。
いきなり心理療法を行ったり、解決策を提示したりするのではなく、まずは 「情報収集して相談者の背景を理解する時間」 なのです。ですからカウンセラーからの質問に相談者が答えるという形が多くなる傾向があります。
どんな質問をされるのか?

1回目の面接では、カウンセラーからの質問が多くなりますが、それはたとえば、こんな内容です。
- これまでの経緯(どんなきっかけで相談に来られたのか)
- これまでに通った病院や相談機関の有無
- ご家族のことや家庭の状況
- 現在の生活や仕事の様子
- 人間関係やサポート環境
- 相談者が解決したいと思っていること(専門的には「主訴」という)
こうした質問を受けると「取り調べみたいで緊張する」と思う方もいるかもしれませんが、カウンセラーは温かく共感しながらお話をお聴きしますので安心してください。このときお聴きする内容は相談者に合った支援方法を考えるために欠かせない情報です。お医者さんが診察のときに「これまでの病歴や症状」を確認するのと同じように、カウンセラーも相談内容の背景を理解しようとしています。
主訴 ― 相談者が解決したいことを伝える

1回目の面接で特に大切なのが、相談者が「何に困っているのか」「何を解決したいのか」を言葉にすることです。これを専門的には 「主訴」 と呼びます。
例を挙げると…
- 「人前で話すと緊張して声が震える」
- 「夫婦関係がギクシャクしていてつらい」
- 「仕事が忙しくて眠れず、疲れが取れない」
きちんと整理して話す必要はありません。「うまく言えないけど、ずっと気持ちが落ち込んでいる」といった表現でも大丈夫です。カウンセラーは、その言葉の背景にある気持ちを丁寧に聴き取っていきます。
1回目の面接でカウンセラーが考えていること

相談者が話しているとき、カウンセラーはただ頷いているだけではありません。頭の中では次のようなことを整理しています。
- 問題の種類や深さはどの程度か
- 通常の悩みの範囲か、気分障害や発達特性が関わっているのか
- この相談機関で受け入れ可能かどうか
- 受け入れる場合、どのような方針で進めていくのが良いか
こうした整理を踏まえて、面接の終盤で「見立て」と「今後の方針」を伝えていきます。
見立てと今後の方針

1回目の面接の最後には、カウンセラーが相談内容を整理し、見立てと今後の方針をお伝えします。
例えば、
「強いストレス反応が続いているため、不眠が起きているように思われます。ここでのカウンセリングでは、ストレス対処の方法を身につけながら、人間関係の見直しも一緒に行っていくことができます。」
このようにまとめてもらえると、相談者も「次に何をすればいいのか」が見えやすくなり、安心感につながります。
具体例 ― 初回面接の一場面

30代の女性Cさんが「職場での人間関係に疲れて眠れない」と相談に来られました。
- カウンセラーはまず、仕事の内容や過去の相談歴について質問しました。
- 家族との関係も尋ねると、Cさんは「心配をかけたくなくて家族には何も話せていない」と答えました。
- そこでカウンセラーは「ご家族を心配させたくないというお気持ちがあるのですね」と共感を示しました。
その後、見立てとして「強いストレス反応による不眠が中心。今後は睡眠の改善とストレス対処を両立させる方向で進めましょう」と方針を伝えました。Cさんは「自分の気持ちを整理してもらえただけで少し楽になった」と話し、継続を希望されました。
インフォームド・コンセント

もし2回目以降も続けることが決まった場合、カウンセラーは次のような説明を行います。
- 料金の確認
- 遅刻した場合のルール
- キャンセルの取り扱いとキャンセル料金
- 面接の場所や今後のスケジュール
これを インフォームド・コンセント と呼びます。事前にルールを確認し、合意を得ることで、安心してカウンセリングを続けることができます。
初回面接は「安心して話すための第一歩」

ここまでご紹介したように、1回目の面接は「問題解決の場」というよりも、安心して今後につなげるための第一歩 です。
「ちゃんと話せるかな」と不安に思っても大丈夫です。言葉に詰まっても、涙が出ても、それは自然なこと。カウンセラーはそのすべてを受け止めながら、あなたに合った進め方を考えていきます。
まとめ
- 1回目の面接は「インテーク面接」と呼ばれ、情報を収集して把握する場。
- 質問が多いのは、相談者に合った支援を考えるため。
- 主訴(解決したいこと)を言葉にしてもらうことが大切。
- カウンセラーは共感的に聴きながら「見立て」と「今後の方針」を伝える。
- 継続する場合は料金やルールを確認し、安心できる環境を整える。
初回面接は、これから心のケアを受けるための大切なスタートラインです。どうぞ肩の力を抜いて、「少し話してみようかな」という気持ちだけ持って来ていただければ、それで十分です。